大きな街。大きな憧れを抱いてやってくる街。自分を探す街。葛藤と後悔と憎しみが渦巻き、やがて、ありふれた大人になっている自分に気づく街。
それでも、みんな頑張っている。
TOKYO SUMMERに感じた「東京」は、そんな人間の街。
夏の日暮れの、どこか清々しい雰囲気を感じる。たとえば、綺麗な映画のエンディングで流れて欲しい感じの。叶わなかった思いも全部受け入れて、ここに辿り着いた彼らの背中が見えるよう。
TOKYO SUMMER
作詞・作曲・編曲:ヒロイズム
君がいたらなんて言うんだろう
らしくないなって また笑うんだろ
そんなことばっか 浮かんでしまうんだ
ふたり眺めていたレインボーブリッジ
遠くで見るから綺麗なんだって 誰かの言葉聞いたから
もう慣れたはずの東京の夜空に 心が竦んでいた
One more chance 聞こえるか?
「近くで見るより、遠くから眺めた方がいいものだってある」
加藤シゲアキさん著書『オルタネート』の台詞を想い出す。夢ってみんなそういうもんだよなぁ。
ふと大きな東京の夜空を見上げながら、怖くなる。あるよなぁ。あれ、何してるんだっけ。何したいんだっけって。大人はきっとそう思う。
「もう慣れたはずの東京の夜空に 心が竦んでいた」を歌うのは加藤シゲアキさん。
「何者か」を求めて足掻いてきた加藤さん。「『生きていてよかった』そんな夜を探してい」た加藤さん。(『深夜高速』の歌詞。加藤シゲアキさんは人生の転機に影響した曲に、フラワーカンパニーズ「深夜高速」を挙げている)
もう涙腺が。()
このTOKYO SUMMER、NEWSの色褪せぬ名曲「エンドレス・サマー(及びEndless Summer)」を連想させるところがこの後あるのだが、そういう視点で聞き直すと、東京の象徴レインボーブリッジが
「追いかけるたびに遠ざかってく虹のようなあの日々は 輝きだけを胸に残し 終わりを告げた」
とも頭の中で重なってきた。
※エンドレス・サマー:作詞・作曲はヒロイズム。ベストアルバム『NEWS BEST』通常盤DISC-2「FAN SELECTION BEST」におけるファン投票で1位となり、1曲目に収録。その後2度再録されている、色褪せぬ名曲。
時をかけて 夏の風よ
僕らの未来に 希望の種、蒔いて
夢叶えてとは言わないから
人の世に愛を 心に花を
涙ふいて旅立つ勇者(きみ)へ
大丈夫とエールを そっと告げて
「夢叶えてとは言わないから 人の世に愛を 心に花を」
なんという、なんという哀しく美しい歌詞であろうかと。
最初聞いたとき、しばらく放心状態だった。
諦めた夢があって、傷を背負っている。その痛みを知っている。様々な痛みを知って、夢を追うより大切なことに辿り着いたから、希望の種を蒔いて少しでもいい世の中だと思える人が増えますように、と、そんな思いなんじゃないかと感じた。
そして加藤さんのエッセイ『できることならスティードで』Trip7をちょっと思い出す(シゲ担)。
「人の世に愛を」本当にそのとおりだ。荒んだ土地に優しい花が綻んだようだ。
この曲、SUMMERなんだけど、全体的に芽吹きを感じる。なんだかやはり『オルタネート』を感じた(シゲ担)。「私は、私を育てる。」全然場面は違うけど、ある意味諦観したような曲の中で花の綻びを感じる。
どうにか、誰かが明日も強くいられますようにと、そう願ってしまいます。
TOKYOって響きだけで どうにかなると思っていた。
夏はもうそこまで来ているっていうのに
振り返らないって あの日誓ったのに
ふと戻れない夏を 眺めていた
「憧れという おもちゃの羽で 飛べる気がしてた」(エンドレス・サマー)とのリンクを感じる・・・(涙
ここからがエンドレス・サマーとは違う、この曲らしいと思うところなのだけれど、「戻れない夏を眺めていた」その心はおそらく強い悔しさに満ちているわけではなく、そういう日々を全部含めて懐かしんでいる感じがする。受け入れるしか無かった、涙を飲んだのかもしれないけれど、それももう「終わったこと」で、いまここに辿り着いた自分を受け入れられていて、ただ懐かしさを感じている印象。
ビルの合間に凛と輝く 小さな星屑のように
名もなき夢を 東京の夜空に 咲かせる日まで
One more chance 走れるか?
ここです。エンドレス・サマーとの結節点。
「あてのない街 ビルの隙間 遠い空を見上げるたび 想い出す夏 ホタルの光 終わらないイノセンス」
今もビルの隙間から空を見上げている。あの日(エンドレス・サマー)は空を見て、無邪気に夢を見ていた日々を思い出していた。私はこのとき見上げている空は、入道雲が浮かぶ昼の空だという印象を持っている。思い出と夢を象徴しているのは、ホタルの光だ。
あの頃より大人になった今(TOKYO SUMMER)、夜空を見上げ、名もなき夢を見据えて明日も1歩踏み出そうとしている。
ビルの隙間から見えるあの日と同じ空に、星屑のように輝く名もなき夢が見えるようになったんだ・・・昼には見えなかった輝きが。ビルの隙間から見る景色の、昼と夜の変化が、紆余曲折を経た人間の成長にさり気なく重ねられている・・・?
この曲は、シングル『LOSER/三銃士』のカップリング曲である。三銃士はシングルとしては2007年の「weeeek」以来のGReeeeNによる提供曲。weeeekの「外面良くして35歳を過ぎた頃、俺たちどんな顔?」のアンサーとして、最年少の加藤さんが35になる年に発売となったのが『三銃士』である。増田さんが「勝負」と言って説明しているので間違いない。
もしTOKYO SUMMERが、エンドレス・サマーの「やがて」の答えだとしたら、三銃士のカップリングに意図的に入れたんだとしたら、これは相当感慨深き話ではないですか・・・!
時をかけて 夏の風よ
僕らの未来に 希望の種、蒔いて
夢叶えてとは言わないから
人の世に愛を 心に花を
涙ふいて旅立つ勇者(きみ)へ
大丈夫とエールを そっと告げて
そっと告げて
これからも「僕ら」は歩んでいく。諦めた夢があって、傷を背負っている。
「ふと戻れない夏を、眺めていた」と言うけれど、星屑の光に、ふとホタルの光(あの頃の夢)を懐かしんでもいいのかもしれない。「時をかけて」いるから。そして大人になってたくさんの名もなき夢が見えた今、この先続くたくさんの未来に、彼らは希望の種を蒔くんだなぁ。
「やがて僕らがありふれた大人になっても、扉はいつも、きっと、あの夏に繋がっているから。」(エンドレス・サマー)