小説家 加藤シゲアキ 出版歴/受賞歴(関連🔗まとめ)/教育現場での起用歴/インタビュー記事厳選/法学部で学んだこと/評判【読書感想文の参考にもどうぞ!】

PR

life.a01.aoyama.ac.jp

 

 

 

加藤シゲアキ

プロフィール

f:id:a183224:20210609200653j:plain

 

1987年生まれ、大阪府出身。青山学院大学法学部卒。NEWS のメンバーとして活動しながら、2012年1月に『ピンクとグレー』で作家デビュー。以降『閃光スクランブル』、『Burn.-バーン-』、『傘をもたない蟻たちは』、『チュベローズで待ってる(AGE22・AGE32)』 とヒット作を生み出し続け、2020年3月には初のエッセイ集『できることならスティードで』を刊行。11月に刊行した『オルタネート』で、第42回吉川英治文学新人賞受賞。同作で第164回直木賞本屋大賞に候補入り、第8回高校生直木賞受賞。アイドルと作家の両立が話題を呼んでいる。

 

 主な候補歴・受賞歴

リンクは受賞記事(またはツイート)に飛びます。

[候補] 第164回直木三十五賞 選評の概要(令和2年/2020年下期)『オルタネート』

[受賞]第42回吉川英治文学新人賞  受賞のことば 選評の概要(令和2年/2020年度)『オルタネート』

[8位]第18回2021年本屋大賞(令和3年/2021年)『オルタネート』

[受賞]第8回高校生直木賞  選評の概要(令和3年/2021年)『オルタネート』

 

選評は各文芸誌に記載。

 

出版物 

小説

ピンクとグレー(2012年1月28日 角川書店 / 2014年2月25日 角川文庫)

・第10回 本屋大賞 第71位

閃光スクランブル(2013年11月25日 角川書店 / 2015年11月25日 角川文庫)

・第11回 本屋大賞 第115位

Burn. ―バーン―(2014年3月21日 角川書店 / 2017年7月25日 角川文庫)

傘を持たない蟻たちは(2015年6月1日 角川書店 / 2018年6月15日 角川文庫)
・第13回 本屋大賞 第102位

チュベローズで待ってる【AGE22・AGE32】(2017年12月12日 扶桑社)

第8回Twitter文学賞1位

・第16回 本屋大賞 第109位

オルタネート(2020年11月19日 新潮社 初出:新潮社『小説新潮』2020年1月号 - 9月号)

第164回 直木三十五賞候補 選評の概要

第42回 吉川英治文学新人賞受賞 選評の概要

◎第8回 高校生直木賞受賞   選考・選評の概要

・第18回2021年本屋大賞(8位)

・第7回 沖縄書店大賞

 エッセイ

できることならスティードで(2020年3月6日 朝日新聞出版)

第10回 うつのみや大賞 特別賞 受賞

ベスト・エッセイ2018(Trip4 岡山)選出

ベスト・エッセイ2020(Trip10 渋谷)選出

 

入学試験・教育題材 起用歴

私立高校入試問題(2019年)(『傘を持たない蟻たちは』イガヌの雨)

桐朋中学入試問題(2020年度)大問2[物語的随筆文](『できることならスティードで』Trip4 岡山)

 ・~鳥取県子どもの読書活動推進事業2021~ 中学生・高校生ポップコンテスト(『オルタネート』)

・学校教材(夏休みの課題🌞🌴)

 

文学賞受賞コメント

第42回吉川英治文学新人賞受賞のことば

初めて小説を書いたのは、2011年の2月から3月でした。あの頃、芸能活動が思い通りにいかず、それを他人のせいにばかりしており、そんな自分に嫌気が差して、なんでもいいから成し遂げなければと、小説を書き始めました。・・・(中略)・・・あれから10年。本賞を頂いた『オルタネート』で読者に伝えたかったのは、ページをめくる手を止められないというような、読書の純粋な楽しさでした。つい自分のことばかり考えていた私が、遅ればせながらようやく・・・

第8回高校生直木賞受賞コメント

 受賞の知らせを聞いた時、不意に『荒野の果てに』が頭の中に響きました。オルタネートは、若い世代に読書を楽しみを知ってもらいたいと思って書いた作品です。作家になってから時折、「加藤くんの本を読んでみたいけれど、小説は難しくて読めない」と言われることがあり、それを聞く度に彼らは幼い頃に楽しい小説に出会えなかったんだろうなと感じていました。・・・

“物語が身体に染み渡っていく。それが社会を作っていく”~吉川英治文学新人賞贈呈式スピーチに追加して~ - 海に投げ込んだボトルメールのように

※こちらラジオの書き起こし記事です。

 ・・・読書っていうのはやっぱり能動的に凄く入っていく感覚がより深いっていうか、没入してそこにいる自分のものになっていく、物語が身体に染み渡っていく感覚っていうのが殊更深いんではないかと言う事で、やっぱりそれが人を作っていくしそれがコミュニティを作っていくし社会を作っていくだろうって。
やっぱり本の力というものが世界を作っているのではないか・・・

インタビュー・特集 厳選

小説執筆にも生きている法学で培った言葉と思考する力|AGU LiFE

・・・それを初めて明確に意識したのは、「誕生するまでのどの段階で、人間としての権利が認められるか」というテーマを扱った授業を受けていた時だったと記憶しています。胎児の段階か、生まれ落ちた瞬間か、あるいはまた別のタイミングなのかという悩ましい問題にも、実は法的な定義があると知り、非常に合理的だと感じる一方、不条理な思いも抱きました。これに関する現行法に強く疑問を持てば、人によっては政治家を目指すかもしれないですし、法律家になろうとするかもしれません。ただ私の場合はそこに物語を感じたのです。・・・

(アイドルとして、作家として ともに歩み見えた景色〈卒業生・加藤シゲアキさん〉 | アオガクプラス )

 

加藤シゲアキ「やめられない」書くこと生活の一部に - ジャニーズ : 日刊スポーツ

・・・アイドルの自分と作家の自分に境界はなく、意識の上では「歌って踊る日、演じる日、バラエティートークする日。そこに、僕は書く日があるだけ。たくさんあるチャンネルの1つ」。・・・

 

NEWS 加藤シゲアキの作家としての強さとは? 『オルタネート』担当編集者が語る才能と魅力|Real Sound|リアルサウンド ブック(新潮社 出版部文芸第二編集部 村上龍人)

・・・加藤さんのように馬力があって、改稿能力の高い作家さんだからこそ対応できたという側面もあり、実際にかなりの無理を強いてしまいましたし、率直に反省もしております……。とはいえ、この頃には直しを繰り返すたびに原稿のクオリティがあがっていくことに快感を覚えていたこともまた事実。加藤さんや私、「小説新潮」の担当編集者はもちろん、校閲の担当者や装幀のデザイナーを含め、『オルタネート』に関わっている皆が、ここまできたら最後まで妥協なく良い作品にしよう、と半ばムキになっていたように思います。

 

 加藤シゲアキさん小説の評判

ピンクとグレー

 

  

 

 そのほか↓↓↓

twitter.com

 

 

閃光スクランブル

 

 

 そのほか↓↓↓

twitter.com

 

Burn.

 

 

 

 そのほか↓↓↓

twitter.com

 

傘を持たない蟻たちは

 

 

 

 

 

 そのほか↓↓↓

twitter.com

 

チュベローズで待ってる

 

 

 

 そのほか↓↓↓

twitter.com

 

オルタネート

オルタネートに関しては上記にも述べたとおり、直木賞吉川英治文学新人賞の最終選考でプロ作家も講評していますのでそちらも参考になります。また高校生直木賞の選考の様子も記事になっていますが、こちらも生徒たちの議論が大変内容の深い物となっています。まずは本作の良さを特に言い得ているものをこちらに抜粋します。

 

何より私が、この作家の資質のひとつと思ったのは各章のそこかしこに光彩を感じることだった。光を感じる小説をひさしぶりに読ませてもらった。そのようなストーリーテールとは別の、何か(原文傍点)を感じ取れる小説、作家にはおそらく天賦のものがあるのだろう。(伊集院静

 

音楽や自然を形容する表現力は秀逸で、プロ作家としても抜きんでたものをもっている。/健全な人間であることと健全な物語を書くことはちがう。枠をはみだし暴れる作品を期待している。(大沢在昌

 

この人も自分の表現を持っていて、自分がどこに行きたいかにとても自覚的だと思った。(恩田陸

 

小説の構造そのものは必ずしも端正なものではないのだが、散見する瑞々しい表現や伸びやかな筆致は、その歪つさを退けて余りあるものである。/読者が見たくないだろうレイヤーを不可視にしているこれは技巧であり、決して欠点ではない。(京極夏彦

 

群像劇として一人ひとりの姿を立体的に描きだす筆力はみごとなものである。/それでも一つだけ注文をつけるなら、オルタネートに対して、おとなの介入や警戒心がもうちょっとあってもよいのでは。オルタネートに闇の部分が加わると、さらに凄みは増したと思うのだ。/おとなを作品世界から排除するのではなく、対峙し対決する物語を、次作以降にぜひ読んでみたいし、その期待を軽々と超えてくれるはずだと信じてもいる。(重松清

 

[吉川英治文学新人賞講評より 『小説現代』令和3年/2021年5・6月合併号]

 

一般的にSFやファンタジーなどでは、たとえば地球に生えていない植物がでてきても、それをいちいち説明したりはしない。『オルタネート』にも同性愛などの問題が未消化のまま並べられているように見えるかもしれないが、それはあまりクローズアップして考えるものではなく、そうしたものが既に日常に溶け込んでいる世界として描かれている。あまり社会的なメッセージに囚われるべきでなく、テーマは一貫して「青春」であり、恋愛と部活とで引き裂かれるが、それこそ両立の難しさ、高校生としての未熟さを示しており、それこそが青春。そこは近未来の世界でも変わらない

(この解釈!加藤さん自身がそう仰っていました。近未来のアプリを舞台にした上で描きたかったのは、普遍的な青春の揺らぎであると。すごい。)

 

自分の感動は間違っていなかったとおもった。今生きている世界をここまでリアルに切り取っている作品に出合ったのははじめてだった

『オルタネート』は三人の感情の振れ幅をていねいに描いていて、それが終盤で読者の心に痛みを覚えさせる。大人になったら感じられないかもしれない青春の痛み。他の作品よりもその痛みが深い。

[第8回 高校生直木賞全国大会レポート]四時間かけた議論の末“同票”で史上初の二作受賞 | 高校生直木賞 - 文藝春秋BOOKS

 

以下はSNSでの評判です。話題作とだけあって反響も多いです。ここに埋め込んだのはごく一部に過ぎません。ぜひ章末のリンクも参照ください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そのほか↓↓↓

twitter.com

 

 

 

 

 

 

随時更新いたします。

 

 

ソロ曲に見る、加藤シゲアキの世界

個人による、加藤さんのソロ曲の考察です。加藤さんのソロ曲と言えばまず「あやめ」

urnotalone.hateblo.jp

“人は違いによって、生きているだけで他人には伝わらない痛みを感じるもので、僕はあなたのその痛みを感じられるようにありたい。あなたと描いた美しい理想郷を求めて、僕は闘う決意をした。自ら求め、諦めない強さがあってこそ理想郷にたどり着けるのだ。僕は多様性を認める世界で生きる。誰もが自分らしく生きることを尊重したい、そんな限りない愛と、闘う決意を謳った曲である。”

 

urnotalone.hateblo.jp

加藤シゲアキのおすすめ小説3選!

すっかり有名になった小説『オルタネート』。鮮やかな快進撃で「作家 加藤シゲアキ」の名を広めた " 青春小説の新たなる金字塔 "です。

抜群の形容力と爽やかな読後感が評判で、名実ともに代表作となりましたね。

しかし一方で、この小説から読んだ人のなかには「キラキラ系の小説を書く作家」と思った方もいたのでは。しかし

 

 

いやいや、もっと沼は深いぞ!

 

 

と申し上げたい!だからこれ書いてる!笑

実は著者の過去作は比較的ダークで、オルタネートはむしろ異質な部類なのです。(加藤シゲアキさんは、自分の仕事がうまくいっていると「自分は今幸せすぎて、このあと罰が当たるんじゃないか」って考えちゃうタイプのアイドルです。())

今回は、加藤シゲアキさんの作品の中で私のお薦めの作品を3つ紹介したいと思います!!!ぜひ最後まで読んでってね!!(笑)

 ※これはあくまで私のオススメですから、本の優劣ではないということだけ念頭に置いて参考にして頂けたらと思います。作風の好みによりけりな部分もあると思います。もちろん、その人がいちばんと思ったものがいちばんです。

 

 

加藤シゲアキさんの小説3選

🥉オルタネート

 

f:id:a183224:20210618211027j:plain

加藤シゲアキ『オルタネート』新潮社公式サイト

*第164回直木三十五賞候補 第42回吉川英治文学新人賞受賞 第8回高校生直木賞受賞 2021年本屋大賞8位

 

「書かずにはいられないものを一番感じた」(吉川英治文学新人賞選考委員)

「光を感じる小説をひさしぶりに読ませてもらった。そのようなストーリーテールとは別の、何かを感じ取れる小説、作家にはおそらく天賦のものがあるのだろう。」(伊集院静)

「音楽や自然を形容する表現力は秀逸で、プロ作家としても抜きんでたものをもっている。」(大沢在昌)

「小説の構造そのものは必ずしも端正なものではないのだが、散見する瑞々しい表現や伸びやかな筆致は、その歪つさを退けて余りあるものである。」(京極夏彦)

 

やっぱりこれは外せない。言うまでもない著者の代表作として一躍有名に。鮮やかな快進撃が記憶に新しいところですが、この小説の見せどころは、やはりその圧倒的な表現力でしょう。直木賞吉川英治文学新人賞の選考の中でもこの小説が最も評価された点は「センス、表現力」でした。

 

ひとつ申し上げておきたいのは、「オルタネート」というマッチングアプリの存在はこの小説の主題ではありません。このアプリの意義は大きく2つと考えます。ひとつは、読み手の世代ごとにどうしても生じる「青春のイメージ」の差異をリセットすること。「新しい世界」にしてしまうことで物語の“時代”に対する読者の価値観をフラットにし、「若い世代の繊細な心の機微の普遍性」を抜き上げることに成功していると思います。そして2つ目は、ある種の残酷性を自然に生んでいること。これは「高校生限定」という特質をもって、同い年であっても「オルタネート」という人間関係に参加する権利さえ与えられない人間、区別された人間の視点も描く幅を生むという効果があると思います。

 

さて、描写を映像と脚本学から先に学び、音楽・映像・衣装・アートにいたるまで造詣が深い著者の膨大な知識がふんだんに活かされた本作。著者は非常に滑らかに、わずかな表現で映像を完全に立ち上がらせていきます。

 

” 三浦くんが燃えている

燃えているのに灰にならないで ずっとそこにいる。”

 

蓉が三浦くんの家に遊びに行った帰りの坂道、夕日、伸びる影、熱くなっている体。その映像や温度が22文字に集約されている、見事な部分。

まさに加藤シゲアキの真骨頂とも言うべき、光から湿度までを感じさせる形容力がが随所にちりばめられた小説です。

それからシーンとしての見せ場はやはりクライマックスのカットバックですね。映画「君の名は。」で有名な技法。複数人のそれぞれの場面を細かく重ねてって昂りを表現するアレです。ぜひそこも注目して欲しいです。

 

オルタネートのミッション若い人に読書の楽しみを知ってもらうことだったと加藤さん自身が仰っておられます。「作家になってから時折、「加藤くんの本を読んでみたいけれど、小説は難しくて読めない」と言われることがあり、それを聞く度に彼らは幼い頃に楽しい小説に出会えなかったんだろうなと感じていました。ならば自分が、若い世代が純粋に楽しめる作品を書き、小説を好きになってもらおうと考え、このような高校生の群像劇を執筆するに至りました。」と。だから「高校生直木賞の受賞が本当に嬉しかった」と。

(「話を高尚なものにしない」ように書いた作品なので文学賞の候補になるなんて意外すぎて「抜き打ちテストみたいだった」そうです笑)

本作は「話が重くない」のがポイント。読みやすく洗練された文章なので、読書に苦手意識を持っている人におすすめなのです。

 

www.shinchosha.co.jp

 

 

 

🥈ピンクとグレー

 

f:id:a183224:20210618210922j:plain

ピンクとグレー 加藤 シゲアキ:文庫 | KADOKAWA

 

とにかく何かとんでもない思いがある。自らの死をもって“美学”を完成させたこの登場人物のように、著者もこれを書き上げて死ぬ気じゃないかと、本気で感じた。

 

「やらないなんてないから」 (ピンクとグレー本文より)

 

加藤シゲアキ”が、人生を掛けた作品。何者でもない自分が「何かを成し遂げなければ」と、「書き上げなければ先はない」と必死で書き上げた、記念すべき処女作。

 

「自分が他人をなぞるように生きるうちに、他人を自分に取り込むように、あるいは相手に取り込まれるように境目が分からなくなり、成り代わる」という表現の方法、「同一化」がメインテクニックに用いられています。

 

構成としては、時系列の入れ替えが激しく視点の同化もあり、敢えて流れるようには出来ていません。最後まである種の気味の悪さを漂わせる効果があるようです。

 

さて、この作品の見せ場は、最も美しいシーンが「死」のシーンだということでしょう。それが美学の大成の瞬間であり、最も輝いており、著者がそれに憧れているのではと思うほどでした。主人公が友人の人生を演じるうちに「同一化」がおこり、彼もまた友人と同じ“美学”を理解してしまう、その悲しいラストは皮肉にもやはり美しいのです。

 爽やかな読後感からはほど遠く、人によっては数日病むと思います(まじ)。

しかしその「病み」もクセになります。もういちどあの熱を感じたいと何度も読んでしまいます。

アイドル加藤シゲアキがこれを書いたというのが悲しくなるくらい凄いです。こちらが1位でもいいくらい。

著者が初稿を約1か月半という勢いで書き上げたという今作。できれば一気に読むのがオススメです。

 

www.kadokawa.co.jp

今作は映画化されておりますが、正直おすすめはしません。なんというか、仕掛けにこだわりすぎて大切な部分が全部抜け落ちてるというか、「そうじゃないんだよ!」って思ってしまった(悲)。あくまで個人の感想ですが、映画は見るなら「ピンクとグレー」とは別物として見てほしい。

 

 

🥇傘をもたない蟻たちは

 

f:id:a183224:20210618211141j:plain

 

傘をもたない蟻たちは 加藤 シゲアキ:文庫 | KADOKAWA

 

自分の心に正直でいたいだけなのに。誰もが胸に抱える生きづらさを鮮烈に切り取った、著者初の短編集。

今を生きる人の「生」と「性」をテーマに、それまでの、加藤さんに近い環境を舞台にしたシリーズを抜け出してサラリーマンや女子高生や性的マイノリティの登場、SF・サスペンスなどの新たな表現にも「実験的に」挑戦した、バラエティー溢れる作品。

 

読後感はダントツで悪いかもしれない(笑)。そもそも本作は流行の(下手をすれば陳腐な) ” 読んで勇気がわいてくる ” ような優越的読後感というものを初めから拒否している

 

本作の設定はそれぞれ現代の社会問題にも絡んでおり、それを舞台に人間の不条理を描いていきます。これこそ加藤シゲアキの真骨頂だと伝えたい。この小説の魅力は、人間の浅ましく汚い部分が書かれていることにある。それを書きたいのだという意思が伝わってくる。彼は人間の深淵に触れたことがあるのだと思いました。

特に注目すべきは最後の「にべもなく、よるべもなく」。親しい友人が同性愛者だと知った男子中学生が主人公。反射的に「気持ち悪い」と感じ、友人のことをそう思った自分を嫌悪する。理解したいのにできないという痛切な足掻き。

 

驚く程に、完成度が高い。

 

そして文庫版の「あとがき」最後の一行まで読んで欲しい。ピンクとグレー以上に、どうにも救いのない話が並んでいる本編を読んで悲寂感にとらわれた後に「あとがき」を読んだとき、「もうちょっとだけ頑張ってみるか」と思わせられる。背中を押して、否、さすってもらったような気持ちになるのです。

 

ある人に言わせれば、「大成するであろう作家の片鱗が見られた作品」。これを読んだときから、著者は必ずなにか成し遂げるだろうし、もっとこの方面を極めて欲しいと思っていました。

 

 

www.kadokawa.co.jp

 

ちなみに、加藤さんは「不条理」「未完成な世界」が主張と思われるソロ曲も作詞作曲しておられます。ライブ演出には小説の技法を入れていることもあります。そんなアイドルいます?笑

ライブ考察 カテゴリーの記事一覧 - 海に投げ込んだボトルメールのように

 

 

番外編:エッセイ『できることならスティードで』

 

f:id:a183224:20210619175228j:plain

加藤シゲアキ『できることならスティードで』公式サイト

*第10回 うつのみや大賞 特別賞受賞作品

 選出:ベスト・エッセイ2018(Trip4 岡山) ベスト・エッセイ2020(Trip10 渋谷)

 

加藤シゲアキ初のエッセイ集。共通テーマは「思索の旅」。全収録作の紹介は下記サイトをご覧いただきたいのですが↓↓↓

加藤シゲアキ『できることならスティードで』公式サイト

 

とても建設的な気持ちになるエッセイ。

f:id:a183224:20210625073821j:plain


ね?(笑) これもって旅行きたい。

それぞれが短編映画のようで、心へ染み渡るモノがすごいんです。

 

f:id:a183224:20210622064805j:plain


啓蒙的・邂逅的エピソードのなかで語られる思いに目頭が熱くなって、
「もうちょっと頑張ってみるのもいいか」
って、明日への元気が湧いてくる。そんな、優しいエッセイです。

 


“やってられないことばかりの人生を、次の目的地に思いを馳せることで豊かにできる力が人間にはあると僕はまだ信じています。”     (加藤シゲアキ『できることならスティードで』より)

 

 

publications.asahi.com

 

 

 あとがき

「読書は(映像などと違って)能動的に入っていく感覚がより深く、没入してそこにいる自分のものになっていく、物語が身体が染み渡っていく感覚が殊更深いんではないか。それが人を作っていくしそれがコミュニティを作っていくし社会を作っていくだろう。やはり本の力というものが世界を作っているのではないか」(加藤シゲアキ談)

 

いまは映画を1.5倍速で「消費」する時代らしい。今こそ読書の楽しさを知って欲しいという加藤さんの仰ったことは再認識すべきだと思います。かく言う私もしばらく読書から離れてたし、あるいは消費するように読んでしまっていたこともあるし、「消費する本」が増えてるような気もする。読書の価値についてもういちど考える機会に巡り会えて良かったです。今回『オルタネート』で世間的にも読者が増えたことが嬉しかったです。(だからこそ『傘蟻』好きな人からすると、既にあの悲寂な作風が恋しいのです。次はまた大人向けのものを書くと加藤さんが仰られていたので、いまから楽しみ!)まだオルタネートしか読んだことがない方は、ぜひ他も読んでみてください!加藤さんの本をきっかけに、「読書」をする人がもっともっと増えますように。

 

 

 

加藤シゲアキ

著者プロフィール

1987年生まれ、大阪府出身。青山学院大学法学部卒。NEWS のメンバーとして活動しながら、2012年1月に『ピンクとグレー』で作家デビュー。以降『閃光スクランブル』、『Burn.-バーン-』、『傘をもたない蟻たちは』、『チュベローズで待ってる(AGE22・AGE32)』 とヒット作を生み出し続け、2020年3月には初のエッセイ集『できることならスティードで』を刊行。11月に刊行した『オルタネート』で、第42回吉川英治文学新人賞受賞。同作で第164回直木賞本屋大賞に候補入り、第8回高校生直木賞受賞。アイドルと作家の両立が話題を呼んでいる。

 

 主な候補歴・受賞歴

※リンクは選評にジャンプします。

[候補] 第164回直木三十五賞(令和2年/2020年下期)『オルタネート』

[受賞]第42回吉川英治文学新人賞(令和2年/2020年度)『オルタネート』

[8位]第18回2021年本屋大賞(令和3年/2021年)『オルタネート』

[受賞]第8回高校生直木賞 (令和3年/2021年)『オルタネート』

[受賞]  第10回 うつのみや大賞 特別賞  (令和3年/2021年)『できることならスティードで』

入学試験等出題歴

私立高校入試問題(2019年)(『傘を持たない蟻たちは』イガヌの雨)

桐朋中学入試問題(2020年度)大問2[物語的随筆文](『できることならスティードで』Trip4 岡山)

~鳥取県子どもの読書活動推進事業2021~ 中学生・高校生ポップコンテスト(『オルタネート』)

・学校教材(夏休みの課題🌞🌴)

 

 

その他詳しくは↓↓↓

urnotalone.hateblo.jp

 

 

 

 

 

 

 PR

f:id:a183224:20210622131152j:plain

 加藤シゲアキが表紙の「TVLIFE PremiumVol.26

いきなり嗜好が出てしまった(汗) 

 

・タイプライターズ~物書きの世界~

史上初の本格派文学バラエティー

人気作家の素顔、本の書き方、読書の魅力、本を楽しめるお店など、本を読むきっかけが欲しい人も読書好きの人も作家を目指す人も楽しめる番組です。

www.fujitv.co.jp

MC:加藤シゲアキ(NEWS) 又吉直樹(ピース) / レギュラー:中村文則 羽田圭介

過去ゲスト(Wikipedia)

 

www.youtube.com

 

 

 

「まだ世界はできあがっていない」という物語 ~環状を成す加藤シゲアキソロ曲四部作で描いたメッセージ?~

 

 

NEWSコンセプチュアルライブツアー四部作NEVERLANDEPCOTIAWORLDISTASTORYでの加藤シゲアキさんのソロ曲

あやめ氷温世界Narrative

について、

 

先日、加藤さんがラジオで「実はソロ曲は繋がってて、Narrativeもあやめに繋がってる(ニュアンス うろ覚え芸人)」とおっしゃってて、どうやらNarrativeの最後の演出があやめ冒頭につながるらしい・・・

 

 

 

おぉ~!つながったっぽい~!氷温とのつながりはまだ明確じゃないけど、Narrativeにあやめの要素居るもんね~!(歌詞も繋がってるはず。いつか考察する())と興奮。しかし、ちょうどこの円環構造に感動しているさなか、青山学院大学(加藤さんの母校)のインタビューが流れてきたので読んだところ、

 

 

鳥肌が立ちました。

 

 

 

まず内容が(写真も)素晴らしいのですが、「法学部で培ったこと」の節で

すべてが繋がったのでは

 

life.a01.aoyama.ac.jp

・・・法学部に在籍していた大学時代には、ひとつひとつのテーマに対して真剣に向き合い、考えを深めていく姿勢を身に付けました。それを初めて明確に意識したのは、「誕生するまでのどの段階で、人間としての権利が認められるか」というテーマを扱った授業を受けていた時だったと記憶しています。胎児の段階か、生まれ落ちた瞬間か、あるいはまた別のタイミングなのかという悩ましい問題にも、実は法的な定義があると知り、非常に合理的だと感じる一方、不条理な思いも抱きました。これに関する現行法に強く疑問を持てば、人によっては政治家を目指すかもしれないですし、法律家になろうとするかもしれません。ただ私の場合はそこに物語を感じたのです。・・・

 

aogakuplus.jp

──法学部で学び得たことはなんでしょう。

「まだ世界はできあがっていない」ということです。最初にそれを実感したのは、「人権はどの時点で生まれるのか、胎児はいつから〝人〟と見なされるのか」といったことに関する授業でした。その定義は法律で決まっているのですが、僕はそれを知ったとき、すごく不条理だけど合理的な気がして、さらにそこに「まだ世界はできあがっていない」という物語を感じたのです。社会の一部を形成している法がまだまだ完成されていない、ということを一番強く思いました。・・・

 

 

 

 

”「まだ世界はできあがっていない」という物語 ”

 

 

 

これでは?!!環状を成す四作が描こうとしたのは!!

 

 

 

 

人を定義するボーダーラインは合理的だが不条理。

万物を受け入れられるそれが理想郷(NEVERLAND)だが、まだ世界はそこにたどり着いていない。*¹

 

氷と水の間、変わる心、優しい嘘と裏切りは線引きできない

「あなた」と「僕が見ているあなた」、「僕」と「あなたが見ている僕」は違うかもしれないが、ほんとうは僕とあなたの境目さえわからない。*²

 

社会の中でいつしか”自分”の境目さえ分からなくなる。

しかし間違いなく、これを構成する「貴様」が「世界」だ。*³

 

未完成の声届けて ページを開いてゆくNarrative*⁴

まだ世界はできあがっていない」という物語(STORY)―――

 

 

 

 

 

 

 

(゚Д゚)あれ!!繋がった!()

 

 

 

 

*1 アイドル史上最も文学的な楽曲、「あやめ」を考察してみた ~加藤シゲアキ ソロ曲考察~ - 海に投げ込んだボトルメールのように

 *2 氷と水の間、変わる心、優しい嘘と裏切りは線引きできない ~加藤シゲアキ「氷温」考察~ - 海に投げ込んだボトルメールのように

*3 加藤シゲアキ『オルタネート』が問う、SNS時代の人間関係 マッチングアプリは青春をどう塗り変える?|Real Sound|リアルサウンド ブック

*4 加藤シゲアキ(NEWS) Narrative 歌詞 - 歌ネット  (アルバム「STORY」に収録)

 

 

 

 

 

 

 

“物語が身体に染み渡っていく。それが社会を作っていく”~吉川英治文学新人賞贈呈式スピーチに追加して~

【文字おこし(加藤シゲアキ)】 2021.05.02 SORASHIGEBOOKより

” 色々な物語が人を癒したり救ったりするし、喜びってものがある訳ですよ物語には。

人を震わせるカがあるってのはスピーチでも言ったんですけど、

特に映画やドラマ舞台とは違って小説はどうなのかと言うと、やっぱり白と黒だけの記号ですよね、文字って言うのは。その記号の先に色々な風景や景色や光景を思い浮かべる訳ですよ。それぞれが読者がその想像って言うのは絶対に一緒じゃないはずなんですよね。同じ景色は想像出来ないと思うんですよ。その中で物語が自分のものになっていくんですよ。

小説や読書体験っていうのはやっぱり映画とかっていうのは飛び込む様な感覚があると思うんだけど勿論享受する感覚もあるんだけど、

読書っていうのはやっぱり能動的に凄く入っていく感覚がより深いっていうか、没入してそこにいる自分のものになっていく、物語が身体に染み渡っていく感覚っていうのが殊更深いんではないかと言う事で、やっぱりそれが人を作っていくしそれがコミュニティを作っていくし社会を作っていくだろうって。
やっぱり本の力というものが世界を作っているのではないか

 

自分は、それを作る側として今選択したという事は、その責任その物語を作る責任って与える影響力を今一度自覚して、今後も作家生活続けていきたいなという事を伝えたかった。"

 

(加藤シゲアキ 2021.05.02 SORASHIGEBOOKより)

 

 

 

 

 

 

 

2021年3月2日、

NEWSの加藤シゲアキさんが『オルタネート』で第42回吉川英治文学新人賞を受賞しました。 

加藤シゲアキ 主な候補歴・受賞歴

 

 

直木賞本屋大賞にもノミネートするという怒涛の快進撃を続けていた本作。アイドルがノミネート、そして受賞するのは賞の創設以降初めてのことであり、歴史的快挙が成されました。(*゚▽゚ノノ゙☆

 

吉川英治文学新人賞受賞のことば
https://www.shinchosha.co.jp/alternate/#message

 初めて小説を書いたのは、2011年の2月から3月でした。あの頃、芸能活動が思い通りにいかず、それを他人のせいにばかりしており、そんな自分に嫌気が差して、なんでもいいから成し遂げなければと・・・」

 


文学賞に明るくない(私みたいな)人間は、吉川英治文学新人賞ってナニ?って思いますよね。詳しくはぜひコチラをご覧頂きたいのですが↓

吉川英治文学新人賞 善行を続けているのに世に知られていない。うん、これは吉川英治文化賞を授けたい。: 直木賞のすべて 余聞と余分

 

なるほど、めっちゃ嬉しい(笑)

幅広いエンタメ性を受け入れて「優れたもの」を選考する、なんだか『オルタネート』に似合う賞だなと素人は感じました。(個人的には「敢えてイベント先行じゃない」っていうのもポイントだった)

 詳しい選評と受賞者インタビュー、受賞のことば は「小説現代2021年5&6月合併号」に掲載されていまして、こちら加藤さんのお顔も素晴らしいので保存版です( )

小説現代 2021年 5・6月合併号 [雑誌] | |本 | 通販 | Amazon

 

大沢在昌さんがタイプライターズ*²で仰ったとおり、全体通して彼の表現の秀逸さが高く評価されています。個人的にはこの選評が好きです(*゚▽゚*)↓

 

「小説の構造そのものは必ずしも端正なものではないのだが、散見する瑞々しい表現や伸びやかな筆致は、その歪つさを退けて余りあるものである。」(京極夏彦)

 

 

 

 

 

 

で(本題)、その贈呈式。

東京 新国立劇場 中劇場で公演中の主演舞台「モダン・ボーイズ」の昼公演後すぐに着替えて駆けつけて登壇という、

最強総合エンターテインメントアイドルなわけですが()

 

f:id:a183224:20210609200653j:plain

アレキサンダーマックイーン、黒シャツ黒ネクタイ(*/ω\*)キャー!!

www.alexandermcqueen.com



 

 

そのスピーチでは、自身の舞台と作家としての活動を重ねて「人が物語を求める」ことについて言及。

 

news.mynavi.jp

 

 

小説のみならず、アイドルとして俳優としてクリエイターとしても、

物語を紡ぎ伝え続ける「加藤シゲアキ」ならではの内容です。

 

 

しかし、そこでは話し足りなかったことを後日ラジオ(2021.05.02 SORASHIGEBOOK)で仰ってましたね。
できればこっちを深めに話して欲しかったし、教育現場でも大事なことなんではないかと思う内容だったので記録しておきたくなったわけです。

 

 

 

 

物語が消費物になってしまった今こそ、

 

“物語が身体に染み渡っていく。それが社会を作っていく”

 

この言葉がもっと広く伝わって欲しいなぁ。

 

 

ことあと、本作は吉川英治文学新人賞の他に高校生直木賞も受賞しました。この組み合わせも素晴らしい。著者は「若い世代に読書の楽しみを知ってもらいたいと思って書いた作品です・・・自分が、若い世代が純粋に楽しめる作品を書き、小説を好きになってもらおうと考え、このような高校生の群像劇を執筆するに至りました。自分の願いが叶い、実際に高校生の方々に届いたのであれば、これ以上に幸せなことはありません。」とコメント。本作にふさわしい賞ですね。

【速報】第8回「高校生直木賞」受賞作決定のお知らせ 高校生たちが選ぶ「今年の1冊」――熱い議論の結果は? | ニュース - 本の話

 

 

 

加藤さんは、今後も当然のように各賞の候補に名が挙がるだろうと推察される作家です。自分で知名度の殻を破って大きくなっていく感じ、そして己は何者かと問われた時「ジャニーズだ」と胸を張って答える姿、本当にカッコイイな。今後の活躍にも勝手に期待させていただいてます。ꉂꉂ( ˊᵕˋ )

 

 

 

 

 

 参考

 

youtu.be

www.shinchosha.co.jp

 *2

www.fujitv.co.jp

 

加藤シゲアキ 主な候補歴・受賞歴

[候補] 第164回直木三十五賞(令和2年/2020年下期)『オルタネート』

[受賞]第42回吉川英治文学新人賞(令和2年/2020年度)『オルタネート』

[8位]第18回2021年本屋大賞(令和3年/2021年)『オルタネート』

[受賞]第8回高校生直木賞(令和3年/2021年)『オルタネート』

氷と水の間、「僕」と「あなた」は線引きできない ~加藤シゲアキ「氷温」考察~

 
氷温
作詞・作曲/総合演出 加藤シゲアキ

Don't believe in me
君を愛して 嘘重ねて

鏡ごしの君
知らない顔をしてる
昨日見た夢を
話しかけてやめにした

グラスのライム香りが鼻で弾けて
ほんの少し正気になって落ち込む
テーブルに落ちてしまった氷が溶けてく
時が止まればと心で願ってる

Don't believe in me
君を 愛して
嘘重ねて 終わりなら oh baby
ドアの音 せめて聴かせて
僕のもとまで届かせてくれよ


君の熱の鈍さが
へばりついて落ちないままで
もしも二度と会えないのなら
月明かりで抱きしめて

Don't believe in me
君を愛して
嘘重ねて終わりなら oh baby
ドアの音せめて聴かせて
僕のもとまで届かせてくれよ
Don't believe in me...

“氷温”

 

 

 

 

実際に加藤さんがお酒を飲んでいる時に氷を落としてまって、その時に「このまま拾わないでみよう」と思ったところから着想を得たという、超絶お洒落エピソードの作品。あの顔面でそれがおこなわれてる空間て何ですか()

 

つまり砂時計ならぬ氷時計。氷が溶ける速度で時間の流れを表現するわけですが、


氷が溶けきらない温度から「未練」が感じられ、それでも戻りはしない氷の姿から絶望的なイメージも出て、別れ際を表現するにふさわしい。無駄のない描写で景色を立ち上がらせる手腕は見事、さすがですよね。大沢在昌氏をして「音楽や自然を形容する表現力は秀逸で、プロ作家としても抜きんでたものをもっている。」と言わしめただけはある。( ¯꒳¯ )b✧※第42回吉川英治文学新人賞受賞選評(小説現代2021年5,&6月号所収)

 

また「グラスのライム香りが鼻で弾けて」について
ジンライムの酒言葉は「色褪せぬ恋」なのですよ。色褪せぬ恋が弾けて正気になったのなら、やはり別れ際、しかも相手に僕が捨てられるような形の別れの歌と解釈できます。

 

 

お洒落。

 

 

 

演出解釈

ライブ演出をざっくりまとめてみます。冒頭左ウイングまで歩いてきた加藤さんが振り返ると、中央ステージにサングラスをした新藤さんが座っているところがライトアップされる。

 

f:id:a183224:20210608193329p:plain

 

曲が始まって、銀のハイヒールを履いた新藤さんと、ライトを持ったJrの皆さんが中央で踊り、加藤さんは左ウイングに座ってそれを見ている構図

 

f:id:a183224:20210608193506p:plain


サビ1の時には新藤さんが右ウイングに座っており、間奏になると2人とも中央で近づいていって、ライト集団(呼び方)の中でポジションが入れ替わって、新藤さんは加藤さんにハイヒールを渡す。

 


サビ2では新藤さんが左ウイングに座り、ハイヒールを持った加藤さんとJrの皆さんは中央ステージで踊る。(つまり、最初と似た構図で人が入れ替わってる)

 

f:id:a183224:20210608193715p:plain

 

最後は加藤さんがハイヒールを履いて、ライトに囲まれて「氷温」って言って終わり。(···説明下手か)

 

 

 

さて、ここが「あやめ」と少しちがうところで、

解釈が定まりにくいんですよね。これがこの曲の面白いところだな。(誰)

 

 

 

解釈①


最初のシーン、明らかに「もう1人の自分」の演出なので、これは僕の中に存在する2つの意識を表現しているんじゃないかと思いました。

 

また「君」について
鏡越し、ドアの音、(へばりついた)熱の鈍さ
と、本人の姿があまり見えてこない。既に明確な距離ができていることが伝わってくると同時に、全体を通して「僕」の視点で書かれているんだなぁと思う。

 

 

つまり、

加藤さん=「自我」、サングラスの新藤さん=「盲目の僕」、ハイヒール=恋心

 

とすると、恋心に踊らされ足を取られる盲目の僕が始めのシーンで、
途中で「自我」が盲目の僕から主導権を取り返し、恋心をコントロールする(ハイヒールを持って踊る)

 

という、別れ際における僕の変化の一連の流れを表したのではと。

 

 

 

 

解釈②

しかしこの感じ、小説『ピンクとグレー』を彷彿とさせられる。

www.kadokawa.co.jp

 

 

「同一化」

 

 

そう、実はこの演出で真っ先に浮かんだのはこれでした。

 

 

りばちゃんがごっちを演じるうちに「同一化」がおこる。あれです。記憶さえ混ざる感覚がある。(彼もまた同じ“美学”を理解してしまう、その悲しいラストがあまりに美しい。)(そっちがテーマなんですよぉ~映画!)

 

あの同一視って、自分が他人をなぞるように生きるうちに、他人を自分に取り込むように、あるいは相手に取り込まれるように境目が分からなくなり、成り代わる

 

作家加藤シゲアキお家芸

 

つまり、主人公の意識が相手の女性側になっていく。その目印となるアイテムがハイヒール。一人称が通して「僕」なのは、語ってる意識はひとつということをしめす。(一人称が変わっては「別人」なので)、と考えてみる。

 

「氷温」という温度で示すように氷は溶けきっていないので未練を感じるけど、

「知らない顔をした」のはどちらなのか

「嘘を重ね」たのはどちらなのか

未練を感じているのはどちらなのか

 

「believe in」という強めの表現を使った

 Don't believe in me (私を信じないで)

 これは誰の思いか。

 

実は心変わりして終わりにしようとしているのが主人公で、未練があるのが相手であったかもしれない。

 

 

 

解釈+α 

 Twitterフォロワーさんの、とっても斬新でステキな発想の紹介。(人任せ芸人)

 ①②とは路線が違いますが、こんな解釈あるんか!って楽しくなったので紹介したい↓

 

 

 

まじかぁ!!!

 

すごい!別に私が何か言うことはないです、素晴らしくない!?って言いたかっただけ。「偽りの姿」「切ない嘘」みたいなのが見えるな、うん()

 

ゆいさんありがとうございます!!ステキ!!

ほかにも私はフォロワーさんに恵まれてましてね、文学や思想や世界史に明るい有識者がいらっしゃるんです。私のツイートに返ってきたリプはどれも考え込まれてて、大変助かりました!ありがとう!なんせ今ここで駄文を垂れ流している主の専攻はバイオなもんで(畑違い)

 

 

 

 

結論

 

ずーっとこの結論があやふやだったんだけど、後日なんとなくまとまりました。

というのも、四部作のソロ曲が環状を成しているというような加藤さんのお話と、

おそらく四作で描いたのはこれであろうという、青山学院大学のインタビュー内容を考え合わせることができたので

 

 

urnotalone.hateblo.jp

aogakuplus.jp

" ──法学部で学び得たことはなんでしょう。

「まだ世界はできあがっていない」ということです。最初にそれを実感したのは、「人権はどの時点で生まれるのか、胎児はいつから〝人〟と見なされるのか」といったことに関する授業でした。その定義は法律で決まっているのですが、僕はそれを知ったとき、すごく不条理だけど合理的な気がして、さらにそこに「まだ世界はできあがっていない」という物語を感じたのです。社会の一部を形成している法がまだまだ完成されていない、ということを一番強く思いました。・・・ "

 

 

 

 

 

テーマは「未完成」だと感じました。

 

氷と水の間、自我と欲望で変わる心、優しい嘘と裏切りは線引きできない

「あなた」と「僕が見ているあなた」、「僕」と「あなたが見ている僕」は違うかもしれないが、ほんとうは僕とあなたの境目さえわからない。

 

 

 

これがおそらく「世界*¹」に繋がっている。

 

 

 

 

 

 

*1 2019年加藤シゲアキソロ曲 (WORLDISTA収録)

アイドル史上最も文学的な楽曲、「あやめ」を考察してみた ~加藤シゲアキ ソロ曲考察~

概要

 

―― ウジェーヌ・ドラクロワ作『民衆を導く自由の女神』が明確なビジョンとして立つ「あやめ」。屈強で慈悲深く限りない愛情、そして決意の曲。求めゆくは差別のない自由の地。彼はツアータイトルNEVERLANDを、"理想郷"と訳した。

これが、わたしが「あやめ」を”傑作”と称する所以です。――

 

 

緒言

 この記事は、加藤シゲアキ氏の演出・製作楽曲『あやめ』について考察したものである。加藤氏は大人気グループ「NEWS」のメンバーとして歌手、俳優、演出家、作家、脚本家など多岐に活躍する「アイドル」である。『あやめ』はNEWSが2017年にリリースしたアルバム「NEVERLAND」に収録された、加藤氏がプロデュース、作詞・作曲を担った自身のソロ曲であり、同年同タイトルのライブツアーで演じられた作品である。その楽曲および演出は、文学性の高さと独特の美しさをもつ希有なものである。文壇でも高い評価を得る*¹加藤氏が書いた詞なれば、巧みな表現は想像に難くない。アイドル史において、これほどまでに多くの考察を生んだ作品はないと評して過言ではないだろう。筆者も大変に感銘を受けたひとりであり、その壮麗たるを後世に伝え、更なる考察に資するため恐れ多くもここに愚説を述べるものである。――――

 

 

 

 

 

と、壮大にそれっぽいことを言ってますが要は、

 

 

 

大好きな『あやめ』についてどうしてもメモっときたくていざ書いたら2340字になってTwitterに収まりきらなくなったからブログにするね!!!

 

 

ってことです(ざっくり)。

これに関しては素晴らしすぎてTwitter文字数多過ぎちゃうので、自分なりにまとめてみました。

 

当然、自説ですので諸説ありきです。

 

 

 

それでは

アン・ドゥ・トロワ ――!!!

 

 

 考察

あやめ

作詞・作曲 / 総合演出 加藤シゲアキ


ウジェーヌ・ドラクロワ民衆を導く自由の女神』がモチーフ(本人談)

※キーワードは「理想郷」「平和」「愛」「多様性」「植物」(本人談)

 

 


※冒頭、雨の演出
※加藤さんは種子の発芽を表現。この種子は、曲中にも出る、釈迦の救いの手「蜘蛛の糸」を掴もうとして掴めなくて倒れ込むという流れから種になった(本人談)

 

f:id:a183224:20210602200537p:plain

 

決して空想 夢想の彼方

︎︎︎・理想郷を思い描いている

※決して:“かならず、きっと”の意
︎︎︎︎︎︎※空想:自ら思い描く
︎︎︎︎︎︎※夢想:①夢のようにあてもなく浮かぶ、将来の夢や希望を描く②夢の中に神仏の至現のあること

 

今だけはそばにいて
・僕と君が、空想の理想郷にいる

 

離さないで
・“僕の手を握っていて”“僕のことを想っていて”

 

 

街揺れる灯り 時のまにまに
︎︎︎︎︎︎※まにまに:①成り行きに任せて動くさま②ある事柄がほかの事柄に併せて進行する
※加藤さんは時計の表現をします。

 

目覚めの鐘の音を
※①時刻を知らせる音
※②瞑想から現実世界に戻る時の合図
※③ノートルダムの鐘→「ノートルダム大聖堂フランス革命以降、自由思想を信奉し宗教を批判する市民により、理性の神殿とされた聖堂?

 

まだ誰も知らない
・主観の世界には僕と君しかいない
※目覚めてないので夜明け前
※植物が発芽してる演出

 

f:id:a183224:20210602203144p:plain

 

あぁあなたの歌声を
雨が流してしまっても
・あなたの思いが現実世界?(雨)にかき消されてゆく

 

幼気に 巡りゆく
やわらかな目をして
︎︎︎︎︎※幼気:①痛々しく、いじらしいさま②幼くかわいらしいさま
・幼い頃の思い出(=理想郷、平和)を何度も回顧する

 

 

決して空想 夢想の彼方

※照明が「夜明け」になる。

 

f:id:a183224:20210602200757p:plain

 

今だけは キスしてよ
・その瞬間にかける思い

 

世界は 光の地図を求める
・理想郷を求める
※光の地図はNEVERLANDの象徴

 

だから僕は生きていく
※決意
※この辺レ・ミゼラブルっぽい(急に雑w)

 

 

f:id:a183224:20210602230037p:plain

 ※コンテンポラリーダンス

※自由を求めてもがく民衆?

 

 

 

紙で切れた指先のように
伝わらない痛みを忘れないように
・見えないほどの些細な痛みに気づけるようにありたい
※この加減が真骨頂かも。作家の比喩表現に脱帽

 

青と藍と紫のボーダーライン
見極めるなんてできないんだ
・LGBTQなどの目に見える具体的個別的なことではなく(本人談)、コンプレックスなど些細なレベルのこと。尚、対象を「生きとし生けるもの」全てとしており、全ての命に分類がないと解釈する。

 

いずれあやめかかきつばた
太平記が出典のことわざ。どちらも優れていて優劣をつけることが出来ないさま。

 

いずれもあやめず青空
・どちらも「殺め」ないように競わずに尊重していこう。

※「菖蒲」との同音意義

 

ここは乾いたただ荒野
それでも前向いて歩こうや
・荒野は雨さえ降らない。命がない。
※ジュニアの皆さんが顔に布を被ったのは生命の気配を消した?
「こうや」の韻

 

 

f:id:a183224:20210602201304p:plain

 

ゴッホも描けないほどの
愛の美しさを
ゴッホが日本の浮世絵に憧れて描いた絵画が「アイリス」=あやめ

ゴッホは絵筆を握る理由を、「星を描くことで希望を、輝く夕陽を描くことでひたむきな魂を表現したい」「私は絵の中で、音楽のように何か心慰めるものを生み出したい」「私は絵画を通じて、人々を救い、救われたかった」と語っていた。絵は彼にとって「愛を訴える方法」であった。
※しかしゴッホの人生は孤独だった。ゆえに魂レベルでの触れ合い、究極の愛を求めた。
※最期の2ヶ月、ずっとゴッホを支え続けていた弟テオの息子が原因不明の病気にかかり、ゴッホの援助が難しい状況になった。些細なことでテオ夫婦と口論になったゴッホは絶望し3週間後に自分の腹部を拳銃で撃ち自殺したというのが通説。諸説はあるものの、この時のゴッホは死を「救い」と思っていたと考えても不思議はない。
※彼の死後、作品は評価される。皮肉なことに、人々はゴッホの絵に自分の中の消化しきれず渦巻く苦しみを投影させて感動する。
→つまり彼は愛を描き、人々を救いたかった(理想郷を求めた)が、それは叶わなかった。

 

あなたと手をつなぎ
重ね重ね塗り描いてこう
※・・・ゴッホの作風が厚塗りだったから?えーもぅちょっと素敵な考察がいい()

 

f:id:a183224:20210602201704p:plain

 

空から落ちる蜘蛛の糸
※釈迦の救いの手
芥川龍之介蜘蛛の糸」仏の慈悲心とエゴイズムをわかりやすく伝えていることで有名

 

んなもんいらねぇ飛んでやらぁ
・自らの手で掴むのだ。
※冒頭の記述のとおり、掴もうとして掴めなかったことがある。

 

雨の弓を渡れ超えろ抱きしめろ
※「雨の弓」=虹
※虹:①多様性、自由のシンボル。②キリスト教では、神との契約、約束の徴

ギリシャ神話の虹の女神"イーリス"→聖花"アイリス"→あやめ(このつながりやばくない?←)
※虹の橋を渡る=理想郷へ

 

1234
※エンジェルナンバー「4」=導きと安らぎを求めよ(?)

 

f:id:a183224:20210602201109p:plain

※なにかに目覚めたように、自身を鼓舞するように虹(クレーン)を駆け上がる

f:id:a183224:20210603071316p:plain

 

決して空想 夢想の彼方

※決して:“かならず、きっと”の意
︎︎︎︎︎︎※空想:自ら思い描く
︎︎︎︎︎︎※夢想:①夢のようにあてもなく浮かぶ、将来の夢や希望を描く②夢の中に神仏の至現のあること

 

今だけは キスしてよ
・その瞬間にかける思い

 

世界は 光の地図を求める
・理想郷を求める
※光の地図はNEVERLANDの象徴

 

そして僕は生きていく

※決意

※最初の「だから」から「そして」になっている。必然性が高まったのか?

 

f:id:a183224:20210603071419p:plain

cause i need u cause i love u

knock knock open the door
never give up, beautiful world
makin' a good thing better
・ドアを開け、自由と美しい世界のために闘おう

 

消して嘘 感傷よ放て
どこまでも
・美しい世界を諦めない強さがあるからこそ、理想郷は生まれる。嘘や感傷は吐き出してもよい。
※「決して」と「消して」の同音意義

 

f:id:a183224:20210602201935p:plain

 ↑スクリーンのカメラさんが優秀

 

決して空想 夢想のあなた
今だけはキスしてよ
※初めて「彼方」から「あなた」へ
※理想郷のために闘うと言ったので、別れのキスともとれるか?
※ここで虹のフラッグを担ぎ、クレーンで表現した虹を渡る演出

f:id:a183224:20210603071917p:plain

f:id:a183224:20210602202208p:plain

 

世界は 心の奥底にある
だから僕は生きていく
※「今だけは」という一時の表現と強い決意の表現との対比。もうそばに居てとは言わない。僕はそうするけど、あなたもそうしなさいと強要はしない。

 

虹を歩いてく
・多様性を受け入れる世界で僕は生きる。
※虹のフラッグと周りのジュニアと相まって、ウジェーヌ・ドラクロワ民衆を導く自由の女神』のシーンを表現

 

f:id:a183224:20210602202423j:plain

ウジェーヌ・ドラクロワ民衆を導く自由の女神

 

f:id:a183224:20210602202035p:plain

 

 

~ここはNEVERLAND(ツアータイトル)~

 

 

 

 

 まとめ

 求める理想郷は、多様性を受け入れる美しい世界である。人類はどうして差別をしがちだが、LGBTQや人種といった目に見えることではなく、コンプレックスなど些細なレベルからボーダーラインなど無い。そして「生きとし生けるもの」全てが「多様」である。違いによって、生きているだけで他人には伝わらない痛みを感じるもので、僕はあなたのその痛みを感じられるようにありたい。あなたと描いた美しい理想郷を求めて、僕は闘う決意をした。自ら求め、諦めない強さがあってこそ理想郷にたどり着けるのだ。僕は多様性を認める世界で生きる。誰もが自分らしく生きることを尊重したい、そんな限りない愛と、闘う決意を謳った曲である。

 

 

 

 

 

 

・・・こんなことが「アイドルのアルバム」であっていいのかってくらい高尚で濃密

 

 

収録アルバムは「NEVERLAND」しかし絶対に映像で見るべき。

 CD 

Discography(NEWS) | Johnny's net

Blu-ray/DVD 

Discography(NEWS) | Johnny's net

 

 

もし、私の稚拙な考察(まがい)によって、加藤シゲアキ氏やNEWSの紡ぎ出す作品に少しでも興味を持ってくださった方がいらっしゃれば光栄の至りです。

 

 

映像(ライブ音)でも解説動画をつくりました!

youtu.be

 

 参考

www.artmuseum.jpn.org

www.artpedia.asia

kaigablog.com

 

 

 *加藤シゲアキ 主な候補歴・受賞歴

[候補] 第164回直木三十五賞(令和2年/2020年下期)『オルタネート』

[受賞]第42回吉川英治文学新人賞(令和2年/2020年度)『オルタネート』

[8位]第18回2021年本屋大賞(令和3年/2021年)『オルタネート』

[受賞]第8回高校生直木賞(令和3年/2021年)『オルタネート』

🔗選評にジャンプします。