加藤シゲアキのおすすめ小説3選!

すっかり有名になった小説『オルタネート』。鮮やかな快進撃で「作家 加藤シゲアキ」の名を広めた " 青春小説の新たなる金字塔 "です。

抜群の形容力と爽やかな読後感が評判で、名実ともに代表作となりましたね。

しかし一方で、この小説から読んだ人のなかには「キラキラ系の小説を書く作家」と思った方もいたのでは。しかし

 

 

いやいや、もっと沼は深いぞ!

 

 

と申し上げたい!だからこれ書いてる!笑

実は著者の過去作は比較的ダークで、オルタネートはむしろ異質な部類なのです。(加藤シゲアキさんは、自分の仕事がうまくいっていると「自分は今幸せすぎて、このあと罰が当たるんじゃないか」って考えちゃうタイプのアイドルです。())

今回は、加藤シゲアキさんの作品の中で私のお薦めの作品を3つ紹介したいと思います!!!ぜひ最後まで読んでってね!!(笑)

 ※これはあくまで私のオススメですから、本の優劣ではないということだけ念頭に置いて参考にして頂けたらと思います。作風の好みによりけりな部分もあると思います。もちろん、その人がいちばんと思ったものがいちばんです。

 

 

加藤シゲアキさんの小説3選

🥉オルタネート

 

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加藤シゲアキ『オルタネート』新潮社公式サイト

*第164回直木三十五賞候補 第42回吉川英治文学新人賞受賞 第8回高校生直木賞受賞 2021年本屋大賞8位

 

「書かずにはいられないものを一番感じた」(吉川英治文学新人賞選考委員)

「光を感じる小説をひさしぶりに読ませてもらった。そのようなストーリーテールとは別の、何かを感じ取れる小説、作家にはおそらく天賦のものがあるのだろう。」(伊集院静)

「音楽や自然を形容する表現力は秀逸で、プロ作家としても抜きんでたものをもっている。」(大沢在昌)

「小説の構造そのものは必ずしも端正なものではないのだが、散見する瑞々しい表現や伸びやかな筆致は、その歪つさを退けて余りあるものである。」(京極夏彦)

 

やっぱりこれは外せない。言うまでもない著者の代表作として一躍有名に。鮮やかな快進撃が記憶に新しいところですが、この小説の見せどころは、やはりその圧倒的な表現力でしょう。直木賞吉川英治文学新人賞の選考の中でもこの小説が最も評価された点は「センス、表現力」でした。

 

ひとつ申し上げておきたいのは、「オルタネート」というマッチングアプリの存在はこの小説の主題ではありません。このアプリの意義は大きく2つと考えます。ひとつは、読み手の世代ごとにどうしても生じる「青春のイメージ」の差異をリセットすること。「新しい世界」にしてしまうことで物語の“時代”に対する読者の価値観をフラットにし、「若い世代の繊細な心の機微の普遍性」を抜き上げることに成功していると思います。そして2つ目は、ある種の残酷性を自然に生んでいること。これは「高校生限定」という特質をもって、同い年であっても「オルタネート」という人間関係に参加する権利さえ与えられない人間、区別された人間の視点も描く幅を生むという効果があると思います。

 

さて、描写を映像と脚本学から先に学び、音楽・映像・衣装・アートにいたるまで造詣が深い著者の膨大な知識がふんだんに活かされた本作。著者は非常に滑らかに、わずかな表現で映像を完全に立ち上がらせていきます。

 

” 三浦くんが燃えている

燃えているのに灰にならないで ずっとそこにいる。”

 

蓉が三浦くんの家に遊びに行った帰りの坂道、夕日、伸びる影、熱くなっている体。その映像や温度が22文字に集約されている、見事な部分。

まさに加藤シゲアキの真骨頂とも言うべき、光から湿度までを感じさせる形容力がが随所にちりばめられた小説です。

それからシーンとしての見せ場はやはりクライマックスのカットバックですね。映画「君の名は。」で有名な技法。複数人のそれぞれの場面を細かく重ねてって昂りを表現するアレです。ぜひそこも注目して欲しいです。

 

オルタネートのミッション若い人に読書の楽しみを知ってもらうことだったと加藤さん自身が仰っておられます。「作家になってから時折、「加藤くんの本を読んでみたいけれど、小説は難しくて読めない」と言われることがあり、それを聞く度に彼らは幼い頃に楽しい小説に出会えなかったんだろうなと感じていました。ならば自分が、若い世代が純粋に楽しめる作品を書き、小説を好きになってもらおうと考え、このような高校生の群像劇を執筆するに至りました。」と。だから「高校生直木賞の受賞が本当に嬉しかった」と。

(「話を高尚なものにしない」ように書いた作品なので文学賞の候補になるなんて意外すぎて「抜き打ちテストみたいだった」そうです笑)

本作は「話が重くない」のがポイント。読みやすく洗練された文章なので、読書に苦手意識を持っている人におすすめなのです。

 

www.shinchosha.co.jp

 

 

 

🥈ピンクとグレー

 

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ピンクとグレー 加藤 シゲアキ:文庫 | KADOKAWA

 

とにかく何かとんでもない思いがある。自らの死をもって“美学”を完成させたこの登場人物のように、著者もこれを書き上げて死ぬ気じゃないかと、本気で感じた。

 

「やらないなんてないから」 (ピンクとグレー本文より)

 

加藤シゲアキ”が、人生を掛けた作品。何者でもない自分が「何かを成し遂げなければ」と、「書き上げなければ先はない」と必死で書き上げた、記念すべき処女作。

 

「自分が他人をなぞるように生きるうちに、他人を自分に取り込むように、あるいは相手に取り込まれるように境目が分からなくなり、成り代わる」という表現の方法、「同一化」がメインテクニックに用いられています。

 

構成としては、時系列の入れ替えが激しく視点の同化もあり、敢えて流れるようには出来ていません。最後まである種の気味の悪さを漂わせる効果があるようです。

 

さて、この作品の見せ場は、最も美しいシーンが「死」のシーンだということでしょう。それが美学の大成の瞬間であり、最も輝いており、著者がそれに憧れているのではと思うほどでした。主人公が友人の人生を演じるうちに「同一化」がおこり、彼もまた友人と同じ“美学”を理解してしまう、その悲しいラストは皮肉にもやはり美しいのです。

 爽やかな読後感からはほど遠く、人によっては数日病むと思います(まじ)。

しかしその「病み」もクセになります。もういちどあの熱を感じたいと何度も読んでしまいます。

アイドル加藤シゲアキがこれを書いたというのが悲しくなるくらい凄いです。こちらが1位でもいいくらい。

著者が初稿を約1か月半という勢いで書き上げたという今作。できれば一気に読むのがオススメです。

 

www.kadokawa.co.jp

今作は映画化されておりますが、正直おすすめはしません。なんというか、仕掛けにこだわりすぎて大切な部分が全部抜け落ちてるというか、「そうじゃないんだよ!」って思ってしまった(悲)。あくまで個人の感想ですが、映画は見るなら「ピンクとグレー」とは別物として見てほしい。

 

 

🥇傘をもたない蟻たちは

 

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傘をもたない蟻たちは 加藤 シゲアキ:文庫 | KADOKAWA

 

自分の心に正直でいたいだけなのに。誰もが胸に抱える生きづらさを鮮烈に切り取った、著者初の短編集。

今を生きる人の「生」と「性」をテーマに、それまでの、加藤さんに近い環境を舞台にしたシリーズを抜け出してサラリーマンや女子高生や性的マイノリティの登場、SF・サスペンスなどの新たな表現にも「実験的に」挑戦した、バラエティー溢れる作品。

 

読後感はダントツで悪いかもしれない(笑)。そもそも本作は流行の(下手をすれば陳腐な) ” 読んで勇気がわいてくる ” ような優越的読後感というものを初めから拒否している

 

本作の設定はそれぞれ現代の社会問題にも絡んでおり、それを舞台に人間の不条理を描いていきます。これこそ加藤シゲアキの真骨頂だと伝えたい。この小説の魅力は、人間の浅ましく汚い部分が書かれていることにある。それを書きたいのだという意思が伝わってくる。彼は人間の深淵に触れたことがあるのだと思いました。

特に注目すべきは最後の「にべもなく、よるべもなく」。親しい友人が同性愛者だと知った男子中学生が主人公。反射的に「気持ち悪い」と感じ、友人のことをそう思った自分を嫌悪する。理解したいのにできないという痛切な足掻き。

 

驚く程に、完成度が高い。

 

そして文庫版の「あとがき」最後の一行まで読んで欲しい。ピンクとグレー以上に、どうにも救いのない話が並んでいる本編を読んで悲寂感にとらわれた後に「あとがき」を読んだとき、「もうちょっとだけ頑張ってみるか」と思わせられる。背中を押して、否、さすってもらったような気持ちになるのです。

 

ある人に言わせれば、「大成するであろう作家の片鱗が見られた作品」。これを読んだときから、著者は必ずなにか成し遂げるだろうし、もっとこの方面を極めて欲しいと思っていました。

 

 

www.kadokawa.co.jp

 

ちなみに、加藤さんは「不条理」「未完成な世界」が主張と思われるソロ曲も作詞作曲しておられます。ライブ演出には小説の技法を入れていることもあります。そんなアイドルいます?笑

ライブ考察 カテゴリーの記事一覧 - 海に投げ込んだボトルメールのように

 

 

番外編:エッセイ『できることならスティードで』

 

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加藤シゲアキ『できることならスティードで』公式サイト

*第10回 うつのみや大賞 特別賞受賞作品

 選出:ベスト・エッセイ2018(Trip4 岡山) ベスト・エッセイ2020(Trip10 渋谷)

 

加藤シゲアキ初のエッセイ集。共通テーマは「思索の旅」。全収録作の紹介は下記サイトをご覧いただきたいのですが↓↓↓

加藤シゲアキ『できることならスティードで』公式サイト

 

とても建設的な気持ちになるエッセイ。

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ね?(笑) これもって旅行きたい。

それぞれが短編映画のようで、心へ染み渡るモノがすごいんです。

 

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啓蒙的・邂逅的エピソードのなかで語られる思いに目頭が熱くなって、
「もうちょっと頑張ってみるのもいいか」
って、明日への元気が湧いてくる。そんな、優しいエッセイです。

 


“やってられないことばかりの人生を、次の目的地に思いを馳せることで豊かにできる力が人間にはあると僕はまだ信じています。”     (加藤シゲアキ『できることならスティードで』より)

 

 

publications.asahi.com

 

 

 あとがき

「読書は(映像などと違って)能動的に入っていく感覚がより深く、没入してそこにいる自分のものになっていく、物語が身体が染み渡っていく感覚が殊更深いんではないか。それが人を作っていくしそれがコミュニティを作っていくし社会を作っていくだろう。やはり本の力というものが世界を作っているのではないか」(加藤シゲアキ談)

 

いまは映画を1.5倍速で「消費」する時代らしい。今こそ読書の楽しさを知って欲しいという加藤さんの仰ったことは再認識すべきだと思います。かく言う私もしばらく読書から離れてたし、あるいは消費するように読んでしまっていたこともあるし、「消費する本」が増えてるような気もする。読書の価値についてもういちど考える機会に巡り会えて良かったです。今回『オルタネート』で世間的にも読者が増えたことが嬉しかったです。(だからこそ『傘蟻』好きな人からすると、既にあの悲寂な作風が恋しいのです。次はまた大人向けのものを書くと加藤さんが仰られていたので、いまから楽しみ!)まだオルタネートしか読んだことがない方は、ぜひ他も読んでみてください!加藤さんの本をきっかけに、「読書」をする人がもっともっと増えますように。

 

 

 

加藤シゲアキ

著者プロフィール

1987年生まれ、大阪府出身。青山学院大学法学部卒。NEWS のメンバーとして活動しながら、2012年1月に『ピンクとグレー』で作家デビュー。以降『閃光スクランブル』、『Burn.-バーン-』、『傘をもたない蟻たちは』、『チュベローズで待ってる(AGE22・AGE32)』 とヒット作を生み出し続け、2020年3月には初のエッセイ集『できることならスティードで』を刊行。11月に刊行した『オルタネート』で、第42回吉川英治文学新人賞受賞。同作で第164回直木賞本屋大賞に候補入り、第8回高校生直木賞受賞。アイドルと作家の両立が話題を呼んでいる。

 

 主な候補歴・受賞歴

※リンクは選評にジャンプします。

[候補] 第164回直木三十五賞(令和2年/2020年下期)『オルタネート』

[受賞]第42回吉川英治文学新人賞(令和2年/2020年度)『オルタネート』

[8位]第18回2021年本屋大賞(令和3年/2021年)『オルタネート』

[受賞]第8回高校生直木賞 (令和3年/2021年)『オルタネート』

[受賞]  第10回 うつのみや大賞 特別賞  (令和3年/2021年)『できることならスティードで』

入学試験等出題歴

私立高校入試問題(2019年)(『傘を持たない蟻たちは』イガヌの雨)

桐朋中学入試問題(2020年度)大問2[物語的随筆文](『できることならスティードで』Trip4 岡山)

~鳥取県子どもの読書活動推進事業2021~ 中学生・高校生ポップコンテスト(『オルタネート』)

・学校教材(夏休みの課題🌞🌴)

 

 

その他詳しくは↓↓↓

urnotalone.hateblo.jp

 

 

 

 

 

 

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 加藤シゲアキが表紙の「TVLIFE PremiumVol.26

いきなり嗜好が出てしまった(汗) 

 

・タイプライターズ~物書きの世界~

史上初の本格派文学バラエティー

人気作家の素顔、本の書き方、読書の魅力、本を楽しめるお店など、本を読むきっかけが欲しい人も読書好きの人も作家を目指す人も楽しめる番組です。

www.fujitv.co.jp

MC:加藤シゲアキ(NEWS) 又吉直樹(ピース) / レギュラー:中村文則 羽田圭介

過去ゲスト(Wikipedia)

 

www.youtube.com